"Redefining Health Care"

三宅啓さんのTOBYOブログを読んでいると、米国で医療改革に関する議論に、医療以外の分野の叡智を活用している様子が出てくる。(ちょっと古いが、↓参照)
http://www.tobyo.jp/tobyoblog/2007/331.html/trackback


ここに出てくるM・ポーター(現ハーバードビジネススクール教授)は言わずと知れた「競争戦略の大家」だが、医療分野にも造詣を深いということを迂闊にも知らなかった。そこで早速、彼が共著で執筆した"Redefining Health Care"を原著で読み始めた。


まだイントロ部分を読んだだけだが、ほほー、という示唆がある。


ポーターたちの主張は、「医療を『コストあたりのアウトカム』で評価することを貫くこと」、これにつきる。そうでない誤った指標や、関係のないプロセス指標が入り組んでいるのを整理・排除しなければならないと言っている。確かに、計測しているのはコストだけとかアウトカムだけ、というのは日本でもよくある話だ。


一例で言えば、DPC(診断群分類包括評価制度)。「定額制医療」のDPC病院になると、疾病単位での売上は"定額"なので、病院としてコスト低減インセンティブは勝手に働くが、このコスト、国からしっかりモニターされている。しかしながら、DPC病院でよりしっかりとモニターすべきはアウトカムなのである。そうでないと、質が犠牲にされている可能性は常に否めない。


残念ながら、DPC病院の診療の質の評価、というものが政策的にセットされているかというと、そういう話は無い。一患者の目線から言えば、だったら質を犠牲にされる恐れが多少なりともあるDPC病院より、そうでない病院に受診したい、となりかねないのだ。


ただ、「アウトカムの評価」は「言うは易し、行うは難し」で何が本当の意味で"アウトカム"なのか、は一筋縄では答えが出ない問題だ。そのあたりが、本書の中でどのように表現されているのか、今後注視して読み進めていきたい。