1256172714**[医療への視点]治っても行くな

気がついたら、世の中新型インフルエンザが本当に流行している。「知り合いの知り合い」レベルだと、かなりの人数が罹っているのではなかろうか。

一昨日から医療者へのワクチン接種がようやくスタートしたが、一般人の接種タイミングは本格的流行にはもはや間に合わなかったと言わざるを得まい。

となると、それ以外の防衛手段が必要になるわけだが、いわゆる「うがい・手洗い」以外にもできることはあるぞ、というのが以下に記しているMRICの記事の転載。筆者は木村先生という無休診療所の先生である。

長い引用だが、ご一読いただきたい。

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 では、これらを踏まえて私自身が、新規のインフルエンザ患者さんを診断し、治療していくときに、実際どのように患者さんに説明しているかを、僭越ながら簡単に以下に記してみよう。皆さんはどのように思われるだろうか?

「よく『解熱後二日』とは言いますが、その法律が作られたのは、タミフルやリレンザが発売されるずっと前のことです。これらの薬を使うと、早ければ飲み終わる前にその基準を満たしてしまいますが、どうも最近の研究では、少なくとも薬を使っている間、つまり最低5日間は、たとえ熱が下がっていても、ウイルスを出していないとは言えないようです。ですから、かかってしまったひとは、今度はかかっていないひとのことも考えて、最低5日間、できれば今日から一週間はお休みしてくださいね」

 一部の保護者は、このように言うと、とても困惑する。
「違うクリニックの先生は、解熱して二日で証明書を書いてくれますよ。同じ日にかかった子は、もう登園しているのに、なぜうちの子はダメなんですか?」
と。(現場で診療していて、一番無力感を味わう瞬間である)
 
 厚労省からも文科省からも、「既感染者」に対するメッセージがあまりにも少ない。
 感染拡大防止の対策をするのなら、「確定診断」のついた「治りかけの既感染者」を「未感染者」にいかに接触させないかの対策を講じなければならない。
 
 学級閉鎖や学校閉鎖は、流行初期の適切なタイミングで施行されなければ感染拡大防止には有効でないと言われている。蔓延期となったあとも漫然とこれらを行えば、伝搬抑制効果が限定的であるばかりか、仕事をかかえた保護者にとっては大きな負担となり、社会的、経済的コストにも大きく影響しかねない。
 
 しかし、罹患してしまった個人個人が、十分に回復するまで、十分に自宅で療養してくれさえすれば、学校閉鎖の必要などなくなり、これらの問題は簡単に解決すると私は思う。
 
 社会人の場合ならいつまでも休んでいられないかも知れないが、今回のインフルエンザの場合、幸いにも感染者は圧倒的に未成年者(未就労者)だ。十分休ませることは可能であろう。

 タミフルやリレンザによって早期に「熱」が「下がった」子どもは、初診時のぐったりした風貌とはまるで別人のように復活して診療所にやってくる。保護者からすれば、「こんなに元気なのだから家にいてもらっても困ってしまう。一日も早く幼稚園や学校に行ってもらいたい」と思ってしまうのも仕方がない。
 しかし、元気に復活してしまうが故に、ウイルスをさらにひろくまき散らしながら感染を拡大させてしまう、という危険性をもっているのも、若年感染者の特徴だ。
 若年者に感染者が多いことで、悲観的な報道が多いが、裏を返して楽観的に考えれば、教育現場の協力と保護者の意識次第で若年者(とくに小児)の感染拡大さえ制御できれば、案外簡単に事態の悪化は避けられるのではなかろうか。
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