不可能を可能にする:脊椎の転移巣を取り除く金沢大の驚きの術式

泌尿器科学会のランチョンセミナーで腎がんの脊椎転移の手術について、金沢大学整形外科学・村上英樹准教授の非常に興味深い話を聴くことができました。 脊椎、つまり背骨への転移は、腎がんだけではなく、乳がんや前立腺がんなど他のがん種でも発症します。…

アンジェリーナ・ジョリーとBRCA遺伝子変異

あのアンジェリーナ・ジョリーが、一昨年の乳房に続き、今年は卵巣と卵管を「予防的切除」したというニュースがかけめぐりました。 ■「アンジェリーナ・ジョリーさん、卵巣も摘出 がん予防で」(朝日新聞デジタル、元ネタニューヨーク・タイムズ) http://ww…

本物の免疫療法と偽物の免疫療法

こともあろうに、天下の日経ビジネスから「いかがなものか」という記事が出てきました。 「第4のがん治療」、モノ作り技術で巻き返すow.ly (日経ビジネスオンライン) 本メルマガで何度か紹介しているPD-1阻害剤の登場に伴い、「免疫療法」を怪し気なものま…

米国で初めて承認された「バイオシミラー」ってなんじゃらほい?

「バイオシミラー」という言葉をご存知でしょうか? 医薬品には低分子化合物と高分子化合物があります。 ・低分子化合物:設計図(化合物の構造)が簡単に書ける物質 ・高分子化合物:化合物の構造が複雑すぎて設計図として表現しきれないような物質。タンパ…

PD-1阻害剤ニボルマブ、進行扁平上皮肺がんで”爆速”承認

本メルマガの過去記事で、PD-1阻害剤ニボルマブが肺がんで有望なデータが出てきた旨を取り上げました。 ■「PD-1阻害剤ニボルマブの肺がんでの新データ」(イシュランメルマガVol.41) 上記のデータを基に、米国FDAが”爆速”で承認したというニュースです。 ■”…

米国でホルモン陽性進行乳がんに新薬Palbociclib登場、は良いのだけれど...

先日、Facebookのタイムラインで↓の記事が流れてきました。 ■「米FDA 乳がん治療薬Ibranceを承認」(ミクスOnline) この薬剤、成分名をPalbociclibといい、CDK4/6阻害剤という新しい種類の抗がん剤(分子標的薬)です。「ホルモン療法による治療歴のない閉…

「非」推薦図書:「がんが自然に治る生き方」

先日、Facebookのタイムラインで↓の記事が流れてきました。 医師も認めた「がんが自然に治る9つの習慣」 ケリー・ターナー博士に聞く【1】:PRESIDENT Online - プレジデント 医師も認めた「がんが自然に治る9つの習慣」 ケリー・ターナー博士に聞く【1】:P…

タミフルはインフルエンザ治癒を”1日”早める

今年はインフルエンザの「当たり年」のようで、私の周囲でバタバタと倒れる人が続出しています。 さて、代表的なインフルエンザ治療薬の一つとして、「タミフル」という薬があります。この薬はかつて異常行動や転落死を引き起こしているのではないかと、マス…

「ありがたや〜」薬は高価な方が効く!?〜偽薬でのオモシロ実験〜

医療用医薬品の治験では、「偽薬(プラセボ)」というものが使われることが多々あります。 本物の薬と偽物の薬(偽薬)が用意され、被験者にはどちらかが投与されるのです。 どの被験者にどちらが投薬されるかは、くじ引きのようなもので、まったく誰にもわ…

他人事じゃない:英国NHSががん治療薬の費用補助をバッサリ削除

「NICE」と聞いて英国の国立医療技術評価機構であるとピンとくる方は、相当の医療通です。 日本の厚生労働省にあたる「NHS」という政府機関に属しており、英国では「NICE」が新薬に対して科学的かつ経済的な評価を行ない、通常の医療保険制度を適用するか否…

「身体を冷やすと風邪ひくよ」

「身体を冷やすと風邪ひくよ」というのは昔からよく言い伝えられていることです。 そんな「おばあちゃんの知恵」には実は根拠がありそうだというお話。 ■”Cold virus replicates better at cooler temperatures”「風邪ウィルスは低温で増殖し易い」( YaleNe…

ダイエットはホルモン陰性乳がん患者を救う

乳がんは早期発見が可能ながんですが、ある意味それ故に、再発リスクを長期的にいかに軽減するかというのが課題でもあります。 通常、ホルモン陽性タイプであればホルモン剤で、その他の場合は化学療法で術後の治療を行ない、再発リスクを少しでも軽減しよう…

膀胱がん治療で30年ぶりのブレイクスルー!

1年ほど前に、泌尿器科医の友人2名と飲んでいた席で出た話です。 「腎がんは、最近やたらと新しい薬が出てきて、使いこなすのが大変なくらい。前立腺がんも画期的な新薬がもうすぐ相次いで出てくる。でも、膀胱がんだけはねえ… 膀胱がんって、俺たちが医者…

書籍紹介:「はじめての乳がん」

Facebookのタイムラインで流れていた投稿の中で非常に興味深い書籍を目にし、読んでみました。 ■「はじめての乳がん〜働くあなたが聞きたい本音Q&A83 」(土屋美樹 亜紀書房) 著者の土屋美樹さんは、働く女性を応援するコミュイティサイト「はぴきゃり」を…

PD-1阻害剤の新データ

PD-1阻害剤については、以前も取り上げました。 ■「ホンモノの免疫療法」の登場:PD-1阻害剤<イシュランメルマガVol.30> この中で、私は、 Phase2試験での奏功率は22.9%(完全奏功は2.9%)と、治療効果としてそこまで”劇的”なものではない ということを書…

牛乳の飲み過ぎは女性の命を縮める!?

「牛乳」といったら、「骨を強くする健康的な食品」のイメージが強いですよね。 その牛乳を飲み過ぎると、命を縮めるかもなんていう研究結果が出てきました。 ■”Drinking a lot of milk may be shortening women’s lives” (牛乳の飲み過ぎは女性の命を縮め…

気になる症状があるって?Google先生が診てくれますよ

皆さん、自分の身体で気になる症状が出てきたとき、どうされるでしょうか? まずはググってみる(ネット上で検索してみる)というのが一番ありそうな話ではないかと思います。 でも、ネットで色々と調べているうちに、かなり不安になってくること、あります…

肺がん領域で個別化医療の新たな進展:ROS1遺伝子変異陽性

「個別化医療」はここ数年の抗がん剤領域でのキーワードですが、特に非小細胞肺がんは「個別化」が進んでいる領域です。 ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチンイブ(タルセバ)など、EGFRという遺伝子に変異がある症例のみに効能が認められている薬剤群もあ…

ランニングの功罪〜走るべきか走らざるべきか?〜

ランニング・ブームが始まったのは、2006年頃だったでしょうか。 当時、私が勤務していた神保町のオフィスには、「ジョグソン」という名前の有志のランニングクラブがあって、毎週水曜日の18時に近くの銭湯に集合して、皆で皇居の周りを走ったものです。 ほ…

「ホンモノの免疫療法」の登場:PD-1阻害剤

がんの世界で「免疫療法」というと、今までは残念ながら”怪しげなクリニックが謳う治療法”というイメージが付いて回っていました。 体内に備わる免疫の力を活性化して、がん細胞を叩くという考え方は根本思想は良さそうなのですが、残念ながら巷で出回ってい…

早期乳がんでの乳房両側切除は期待するほどの効果出ず

がんに対する3大療法は、「手術」「抗がん剤」「放射線」の3つです。 この内、手術の根本思想は、「腫瘍細胞を取り残しが無いように切り取る」ことで完治を目指すとういもので、その意味では「なるべく大きく切除する」という考え方になります。 一方、あま…

子宮頸がん予防ワクチンを男子にも!?

子宮頸がん予防ワクチンについては、日本では2010年に普及が開始したものの、2013年に副反応(接種後の原因不明の身体の痛み)の問題があがり、多くの自治体が積極的な接種推奨を取り止めることになりました。 一方で、子宮頸がんの罹患率を見てみると、米国…

ダニに咬まれると肉アレルギーになる!?

野生のダニは、日本紅斑熱や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などの病気を媒介する可能性があるため、油断できないものですが、こんなケースもあるのだという米国発のニュースです。 ■”Lone star tick can make you allergic to red meat” <「ダニに噛まれ…

臨床睡眠医学会にホンモノの学会の姿を見た

月初に、日本臨床睡眠医学会(略称ISMSJ)の学術集会で、1時間以上もの講演をするという珍しい機会を頂きました。 ■第6回ISMSJ学術集会 プログラム そもそも学術的な学会のしかも「教育プログラム」というのに、こんな軽いノリのお題で良いのかなと危惧して…

乳がんの病院・医師ガイド「イシュラン 愛媛版」に乳房再建の情報を追加!

乳がんの患者さんにとって、長く続く身体上・精神上の苦痛の根幹の原因の一つが、手術による乳房の喪失・変形であることは論をまたないでしょう。 昨年、人工物(インプラント)での乳房再建術に保険適用がされたこともあり、乳房再建を希望する患者さんが増…

HER2陽性早期乳がんの術後補助療法で有望なneratinib

HER2陽性の乳がん治療薬については、昨年・今年と日本市場でも立て続けに新薬が出てきていますが、また更に有望な薬剤が米国で開発されているというニュース。 ■”Puma Biotechnology Soars on Breast Cancer Drug Results” <Bloomberg> (開発中の乳がん治療薬の治験結</bloomberg>…

女性のがん患者さんが気兼ねなく行ける美容室リスト登場

「髪は女性の命」とも言いますが、抗がん剤治療を経験する女性のがん患者さんにとって、苦痛の大きな副作用の一つが「脱毛」です。 脱毛を経験すること自体、非常な苦痛であるのは想像に難くないのですが、さらに切実な問題なのが、そうした際に「気兼ねなく…

「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2014年版」発売!

「診療ガイドライン」というと、普通はその疾患を治療するお医者さんのためのものです。 ガイドラインでは、治療の選択肢がいくつか考えられる場合、それぞれの治療はどの程度のレベルの科学的なエビデンスに基づいており、従ってどの程度推奨されるのか、と…

新規吸入剤インシュリンがFDAに承認

このブログはがん関連の話題を比較的多めに取り上げているのですが、今回はめずらしく糖尿病のお話です。 糖尿病は、経口剤で血糖値をコントロールできている間は経口剤で治療するのですが、それでもコントロールしきれなくなると今度はインシュリンの出番に…

がんの治療に特化した資金調達サイト「Standbuy」

がんの治療費が、分子標的薬の浸透などに伴って高額になってきているのは、先進国では共通の現象です。そして、患者にとっての負担額が最もシビアなのは、おそらく米国でしょう。 その米国で、がんの治療に特化した資金調達ができる「Standbuy」なるサイトが…